光ラジカル重合開始剤の種類【1分で分かる】

1.光ラジカル重合開始剤とは

光ラジカル重合開始剤の役割は、紫外線や電子線を吸収してラジカルを発生し、モノマーやオリゴマーを重合させることです。

 

2.光ラジカル重合開始剤の種類

光重合開始剤は、硬化方法により以下の3つに分類されます。

 

1.ラジカル系

2.カチオン系

3.アニオン系

 

では、それぞれどのような光重合開始剤があるのか見ていきましょう。

 

1-光ラジカル重合開始剤

硬化速度が速く、開始剤の種類が豊富です。

アクリレートやメタクリレートなどのモノマーで使用できます。

 

一方で、硬化後に収縮したり、空気中の酸素によって反応が阻害されるといったデメリットも存在します。

 

①分子内開裂型

TypeⅠと呼ばれることもあります。

開始剤自体が分子内開裂して、ラジカルを発生します。

黄変が少なく、表面硬化性が高いことが特徴です。

 

・ベンジルケタール

BDKと表記されることも。

 

・アセトフェノン(α開裂型)

置換基のあるタイプと無いタイプがあります。

α-ヒドロキシアセトフェノンは黄変が少なく、表面性硬化性が高いタイプ。

α-アミノアセトフェノンは長波長の吸収が強く、内部硬化性が高いタイプです。

 

・アシルフォスフィンオキサイド

硬化性が高く一方で、酸素阻害を受けやすいという欠点があります。

 

②水素引き抜き型

TypeⅡと呼ばれることもあります。

他の分子から水素を引き抜いて、ラジカルを発生させます。

表面硬化性が高い一方で、黄変しやすいという欠点もあります。

 

・ベンゾフェノン

2級アミンや3級アミンと反応します。

汎用性が高く、樹脂との相溶性が高いことが知られています。

芳香族系のケトンです。

 

・チオキサントン

3級アミンと反応します。黄変が少ないことが特徴です。

 

2-光カチオン重合開始剤

光を吸収すると酸を発生します。

 

酸素阻害や硬化収縮はしません。

 

一方で硬化速度が遅く、開始剤の種類もあまりありません。

 

エポキシ樹脂やビニルエーテルモノマーで使用しますが、そもそもモノマーの種類が少ないことが欠点です。

 

・ヨードニウム塩

・スルフォニウム塩

・ジアゾニウム塩

 

3-光アニオン重合開始剤

光を吸収すると、アミンやアニオンなどの有機塩基を発生します。

 

ラジカル重合と異なり、UV照射後も硬化反応が進行します。

光カチオン重合のように強酸を発生させないため、金属材料を腐食させることはありません。

 

エポキシやアクリレート、イソシアネートなどのモノマーに使用することが出来ます。

 

・エポキシオリゴマーとチオールの付加反応

・シラノールの縮合反応

 

3.光重合開始剤の選び方

①ラジカルの生成のしやすさ

②樹脂と相溶性が良い

③生成されたラジカルの反応性の高さ

④光源スペクトルと吸収波長が重なっている

⑤光の吸収による黄変の少なさ

⑥揮発しづらい

⑦貯蔵安定性が良く、暗反応を起こさない

⑧安い

⑨酸素阻害を受けづらい

⑩樹脂内の他の成分(顔料)などの吸収スペクトルと重ならない

⑪臭いがきつくない

 

光重合開始剤には様々な種類がありますが、モノマーとの相性を見極めておかないと、

硬化性能に大きな影響を及ぼします。

 

用途や求める物性によって適切に併用することで

波長域を広くしたり、硬化性を向上させたりすることが出来るのです。